THE LAST DESTINY 第二十三話 グロッケン帝、崩御 耳障りな音を立てる鍔迫り合いから二人の体が離れる。 ライアスは即座に再びアイオスとの間合いを詰めた。 「はあ!!」 ライアスの剣が振り下ろされる。アイオスはそれを受け止め、力に逆らわずに体を右に流して側面からライアスに斬りつける。 半歩引いて斬撃を躱したライアスは鋭い突きを繰り出す。 凄まじいスピードで放たれてきた突きを体を回転させて躱したアイオスは、そのまま先程ジェイルに放った技を繰り出した。 「回転剣舞!!」 腕の力と遠心力が融合した突進技がライアスに迫る。ライアスは迫りくる剣撃を捌きつつ後退する。そして一瞬、アイオスの胴ががら空きになる。 「疾風斬!!」 一瞬の隙をついてライアスが光を纏って突進する。 「ぐうあ!?」 アイオスがうめき声を上げて光に呑まれる。そのまま一緒に壁に激突した。 ライアスは弾かれるように離れて次の技を繰り出した。オーラテインを青眼に構えて集中すると、刀身に無数の光の球が浮かび上がった。 「閃光烈弾!!」 オーラテインを振り下ろすと光の球がアイオスに向かう。アイオスは避けようとするが躱しきれずに光球が直撃した。 「ぐああああ!」 アイオスと共に城壁が吹き飛ばされる。粉塵が晴れるとアイオスが怒りの形相で立っていた。 「流石に………効いたぞ………」 怒りで顔が歪む。しかしその口調は冷静だった。 「ダメージのせいか………剣の振りのスピードが落ちているようだな………。だが」 次の瞬間、アイオスの姿がかき消えた。 「なに!?」 ライアスは驚愕した。すぐ前にアイオスが間合いを詰めてきたのだ。 「くらえ!!」 アイオスの剣が振り下ろされる。だがライアスは飛び退いて躱して剣を振り上げた。 「はああああああ」 ライアスは気を集中しだした。刀身に出た光の球がそのまま刀身に吸収される。そして大きなエネルギーの刃が出てきた。 「何だと!?」 アイオスは思わず身構えた。何か得体の知れない技が放たれると体が直感で分かっていた。 光の刃を伴ったオーラテインをアイオスの方に構えてライアスは叫んだ。 「くらえ! 崩牙雷刃!!」 疾風斬と閃光烈弾のエネルギーを兼ね備えた威力がアイオスに襲いかかる。 アイオスはオーラテインを剣で受け止めた。そのまま後ろに威力で押される。 「ぐうう………」 「おおおおおお!!」 二人の動きが止まり力の押し合いになる。耳障りな音を立てて鍔迫り合いが繰り広げられる。ふと、違う音が響いた 「なに!」 アイオスが驚愕の表情を見せる。次の瞬間、アイオスの剣が音を立てて折れた。 そのままアイオスは後ろに倒れ込み、ライアスは後ろに突き抜けて止まる。 「ここは………」 アイオスは折れた刀身を見て気付いた。そこはジェイルとの戦いで、攻撃を捌かれた時に拳が当たった場所だった。 「今の力ならこの技をできると思った………。それではもう闘えないな」 肩で息をしながらライアスはアイオスを鋭く睨む。 はっとしてその場からアイオスは遠のいた。 「もう撤退するなら、追わない。とどまるなら………倒す」 息を整えるとライアスははっきり告げた。 アイオスはしばらく考えるふりをした。ふりをしただけだった。 答えは決まっている。 「俺は………」 アイオスが言いかけた時、凄まじい爆発音と共に王座の間の扉が二人の間を横切っていった。 「なんだ?」 ライアスが王座の間の方向を見ると人が出てくるのが見えた。 逆立った短い銀髪、鷹のように鋭い眼。黒のコートを羽織り、黒のズボンをはいている。 コートから除いた腕には………。 「グロッケン帝!!」 その男の腕にはグロッケン帝がつり下げられていた。 ライアスは助けようと剣を構えて接近する。 その時、無造作に男が足を振り上げた。 すろと突如風が巻き起こり、ライアスを吹き飛ばす。 「うわあ!」 風はライアスの体を幾個所も切り裂き、離れた場所の壁にライアスの体を打ちつけた。 「………くっ………」 ライアスは起きあがろうとするが体が言うことをきかずにその場から動けない。 ライアスを吹き飛ばした男はグロッケン帝を無造作にその場に投げ出すと、もう片方の手に握った物をアイオスに見せた。 それは赤と青の色に分かれている勾玉だった。 感情がこもっていないような声でアイオスに話しかける。 「《ライデント》は回収した………。撤退する」 男は真っ直ぐベランダに向かいだした。 「ゲリアル」 アイオスが男に向かって言う。 ゲリアルと呼ばれた男は感情を持たない顔をアイオスに向けた。 「何故、邪魔をした?」 アイオスがゲリアルに向けて怒りを押し殺した声で問いかけるが、ゲリアルは気にした様子もなく言葉を返す。 「あの状況では、お前の不利は明らかだ。それに我々の任務は《ライデント》を回収する事だ」 そう言ってゲリアルは姿を消した。アイオスはライアスを見て言う。 「また会う時が、決着の時だ………」 アイオスもまた、そう言って姿を消した。 ライアスはアイオスともう一体の魔族が消えた方向を見て呟いた。 「くそ………、また………」 ナニモ、デキナカッタ。 そしてライアスは気を失った。 |