『NG集A』 「弾いてみせろ」 アイズ・ラザフォードは鳴海歩を呼び出して、ピアノを指し示した。 「ピアノ界の神話、ナルミの血がどれほどのものか聴かせてみせろ」 「……残念だな。ピアノはとうにやめたよ」 「嘘はよせ」 アイズは歩の手を強引に取って自分に引き寄せた。 「お前の手はピアノに魅入られた手だ。今も練習に明け暮れる熱い……」 そこまで言ってアイズは口を止めた。 歩も「やはりか」というため息をつく。 「熱い……手、だ?」 思わず疑問調になるアイズ。歩の手はタコが出来ていた。 もちろん、ピアノの引き過ぎで付いた物ではない。 「……姉さんが料理してくれなくてな」 「……苦労しているんだな」 アイズは何処かで共感して、歩と同時にため息をついた。 『やぁ、愉快なお知らせだ。時間が五分をきっているから手早くに言うぜ』 『実は退屈しのぎで特別席に爆弾を仕掛けさせてもらった。火薬は200キロ。ホールの屋根も吹っ飛ぶぜ』 「これだ……」 歩は爆弾があるという電話を受けた事務員と共に爆弾を見つけた。 ダンボールを開けてみると…… 「なんてこった……」 それは時限式の爆弾だった。しかし普通の爆弾ではなかった。 時限式のくせに導火線が出ていて火がついていた。 「なんじゃこりゃ?」 『やあ、おいらは中国生まれの河亀。愛称はラッキー! 覚えと――』 覚える前に導火線が爆弾まで辿り着き、会場は大爆発した。 『スパイラル〜推理の絆〜』完(汗) 「嬢ちゃん。えらくかわいいな。ゲームに付き合ってくれよ」 浅月香介は怒りを前面に押し出している結崎ひよのに話し掛けた。 「嫌です。怪しい男」 ひよのはしかし取り合わずに歩き出した。 「た、頼む! 話が進まんのだ!!」 「しょうがないですね」 半泣きになりながら頼んでくる香介に、流石に良心の呵責があったのかひよのはゲームを受ける事にしました。 「ここに七枚のトランプがある。俺に分からないように一枚選んでくれ。俺がそのカードを推理して当てる」 そして香介はポケットから人形を取り出した。 「俺が当たらなかったらゲーセンで取ったこの『予後不良で死ぬ寸前のせん馬』のぬいぐるみをやろう」 「いりませんよ。そんないかがわしいぬいぐるみ」 速答したひよのはカード勝負に挑んだ。 香介の手にあるのはダイヤのQ クローバーのA スペードの2 ハートの10 スペードのA ダイヤのA スペードの13 「……」 ひよのは一枚カードを取った。 「まずA三枚は考えなくてもよさそうだ」 「残念ながら」 ひよのが選んだのはスペードのAだった。 「……」 「……」 「商品は納豆パンプキンイカスミ苺パフェDXです。四千円です」 「……」 香介は泣いた。声も出さずに泣いた。