『遠くまで』





 この鳥かごの中は何も恐怖は無かった



 全てがここにあり 何も不満は無かった



 困ることも無い 飢える事も無い 眠れないことも無い



 ただ ここでは 自由も無かった



 かごのなかの僕は 鎖を翼に巻かれていた



 そこにいることが全てで ただ生きることが全てで



 飛び立つことさえ忘れていた







 ふと 開いているドアから一歩踏み出すと そこは広大な世界だった



 かごの中の世界 外の世界 何もかもが違った



 襲いくる圧力 荒れ狂う激流 無色の暴力に打ちのめされて



 それでも 僕は自由を求めた







 遠くまで飛んでいこう



 誰か 知らない誰かに会いに行こう 安寧の中を飛び出して



 恐怖よりも 安全よりも 何よりも強い想いと共に



 胸を満たす『探求』と共に





 遠くまで 遠くまで





 どこまでも続く視線の先まで