「ハモネプ騒動」


他の雑文庫に入っている文章とは桁違いに量が多いので(内容は薄いですが)読む方はご了承ください。
では、「ハモネプ騒動」スタートです。

=======================================================

序章:それはあれからはじまった。


それは一通のメールから始まった。
その日、僕はいつものようにネットサーフィンをしようとサークルを終えて帰宅した後にネットにつなげました。
最初にサーバーに繋げてメールチェックが行われます。
そして、ふと気になるタイトルがありました。


「突然のメール、失礼します」


なんだろうか?
とりあえず開いてみる。
実は以前被害にあってウイルスソフトが消去されている状態だったので得体の知れないメールを開く事には抵抗があったのですが、




なんとかなるさ!




と自分を納得させて開いてみました。
するとそこにはつらつらと文章がつづられております。

既に内容を忘れているので覚えているところだけ簡単に言うと、

「わたくし、○○TVのADのIと言う者です。
 ハモネプの北海道予選に出てくれる人を探していたらおのちん氏にあなた達を紹介されたんです。
 でていただけませんでしょうか?」

おのちん氏、というのは北海道にアカペラを広めようと頑張っていた人で、今も頑張っています。
そのかいあってアカペラは北海道で広まったわけですが。

その当時はハモネプの対象年齢でアカペラをやっている人々は皆無。
僕らも他に見た事がないんですから。
前に大学祭でストリートをした時におのちん氏と知り合いになっていたのですが、それから一月もしないうちにビックチャンスが回ってきたのです。







「テレビ!?」







ようやく事の重大さに気付いた時は思わず笑ってしまいました。
今までテレビに映ったなんて高校時代の合唱コンクールでNHKに映った程度。
しかもほとんど映ってないし………。

たとえるなら林の中で沢山現金が入ったバックを発見するぐらいの衝撃があります。
拾った人の気持ちが少し分かりました。

とまあ、テレビに出れるかもしれない(というか頼まれているんだから、出るといえば出れる)のですぐにメンバーに連絡しました。

「おい! メールでハモネプに出ないかって誘われたんだ! どうするよ!」


数日後にメンバー全員で集まった時にあるメンバーから第一声で言われました。











「ハモネプって何?」











僕は答えました。

「分からん。兎に角テレビでアカペラ歌うんだと」

全く、テレビに出れるという事で少しも番組内容を把握していない俺、というか俺等。
でもその時は本当に舞い上がるしかなかったのですよ。
苦労してテレビに出れないような人がいる中で出てくれと言われたのですから、舞い上がらない方がどうかしてます。
でも舞い上がってないメンバーもいました。

「でもネプチューンがやってるバラエティだろ? 真面目じゃないなら歌いたくないなぁ」

その意見もごもっとも。
でも唯一、どんな番組だか知っているリーダーが助け舟を出してくれました。
どうやら俺と同じくらいミーハーなようです。

「とりあえず、真面目に歌うよ」

その一言で他のメンバーがやる気になりました。

「なら、いいよ。ていうか、うち等以外でやっている奴等ってほとんどいないから、全国大会いけるんじゃない?」
「そうだね。頼んでくるくらいだからきっと全然人がいないんだよ」

現金な奴等です。
俺も人のことを言えませんが。
というか、思えばなんて傲慢な人たちなんでしょうか……、これが後々の挫折に続いていくのですな。

どうやら皆、本質は同じだったようです。
高校時代をあわせて三年も一緒に歌っているのも理由が分かります。

で、僕らは早速そのIさんに会って見る事にしました。









指定した日はあいにくの雨。
ちゃんと分かるか心配でしたが、まあ、五人で集まっていればあっちが気付くだろう。
場所も教えてあるし。

指定した時間を少し過ぎた頃。

「まさか………あれじゃないよな?」

メンバーの一人がそう言って指差しました。
その先には旅行鞄を持ってきょろきょろと周りを見回しながら歩いてくる一人の男。
それだけならきっとそうだろう、と思えたのですが。

「あの格好………」

一斉にリーダーへと視線を移す俺達。
リーダーは顔を引き攣らせながら呟きます。







「下っ端だ」







その男の人はTシャツ一枚にジーンズといういかにも普通の人っぽい人だったのです。
まあ、ADですから俺等と何が違うかと思いますが、俺達が想像していたのはもう少し大人っぽい人でした。

(もう少しちゃんとした服装かと思った)
(あれだとそこいらにいる兄ちゃんだろ)
(ま、まさか………だまされてるんちゃう?)

(びっくりカメラか!)

と、聞こえたら失礼極まりない会話をしていると気付いた男の人が近づいてきました。
どうやら本当にADさんらしいです。

「あ、初めまして〜。Iです」

ぺこりと腰が低いI氏。

その時点でうちらの中であだ名が決まりました。





(下っ端!)





「北海道って寒いですね。空港降りたら凄く寒くてびっくりしました」

季節はまだ六月初めだ。
八月でようやく夏、といえる気候だから仕方が無い。しかもその日は雨だし。
その場で簡単に自己紹介。
そして場所を移して今後の予定などを詳しく聞く事に。
肩透かしを食らったが、何かとても面白いことが起こる予感がこの時から湧き上がっていたのでした。










第二章:北海道予選当日

その後はいろいろとあったが特に書くことは無いのでいきなり当日。
札幌市市民会館にいくと数ユニットが練習していた。
流石に誰も見た事が無い。
俺が所属している合唱団の先輩方のユニットしか知らない。

「あー、どこも上手いなぁ」

こういう時は誰もがそう思う。
基本的に消極的でそのくせ見栄っ張りな俺達は表には出さずにマックのバーガーで昼飯を済ます。
しかしてりやきバーガーを買ってと頼んだら、ハンバーガーを買って帰ってきた時はちゃんと歌えるのか? と流石に心配だった。

リハーサルのために会場に入るとI氏がやっぱり下っ端で働いていた。
俺等の予想は正しかったと思いつつリハーサル。
起こしている事業は下り坂でハモネプの解説している方がもうかる、と豪語しているM・I氏に指導を受けつつリハも終了。
遂に運命の時間が訪れる………。

本番がスタートして何組かが出て行く。
そして次にはグループ名を呼ばれた!

隊列的に俺が一番端になった事で自然と隣には司会者が並ぶ。
俺の横に並んだのは、ネプチューン名倉。

「初めまして〜」
「は、は、初めまして………緊張してます」

俺の緊張度の激しさに会場が和やかな雰囲気に包まれる。
しかし俺はそれどころではなかった。

まず隣が名倉だという事に自信が無い。
ハモネプはネプチューンの番組だというのにネプチューンを全く知らなかったのだ。
知っていたのはグループ名とお笑いの奴等というだけ。
三人のどれが名倉でどれがほりけんでどれが泰三かなど知るわけが無い。

そしてこれが一番なのだが………











緊張で尿意が高まっていた。












その間も名倉がこのセールスポイントも何もない奴等を盛り上げようとトークを展開する。

「紅月は芸能人では誰が好き?」

何とか面白い事でも言おうかと捻ろうとしたが緊張で鈍った頭ではどうしようもない。
本当は安達裕美とでも言ってなんとなく○リコンっぽいと笑わせようと思ったが危険だと思い正直に言った。

「遠藤久美子」

「なるほどぉ。その遠藤久美子さんがスタジオに来てますよ〜」

笑うしかなかった。
いるわけが無いのだが何かしらのリアクションをするしかない。

「なにぃ!!?」

とか叫ぼうと思ったがおそらく引かれるだろうと思いとどまって笑ってみる。
ちなみにOnAirでは酒井若菜に笑われてた。












そんなに気持ち悪いかよ!!(怒)












もちろん冗談で通してもうこれ以上トークは嫌だと気配で訴えかける。
そしてようやく歌った。

緊張してたわりには上手く歌えたが、座りなおしてから俺ともう一人はかなりやばめだった。
準備で中断する暇をぬってこそっと聴く。

「トイレ行きたくない?」

「ものすごく行きたい」




間髪ないです。どうやら俺よりも重傷らしいです。
だが、俺等の隣にいた全身に白ペンキを塗り、顔はおしろいで塗り固めたネタ集団の撒き散らした白い粉のおかげでそれを掃除
するのに更に中断する。


もういい加減にしてください(切実)


まさか公の前でバーストすることになったら天国が一気に地獄です。
俺またはもう一人は全国波で最狂の醜態をさらしてしまう事になります。
それだけは避けなければ。

だが、何とか俺は耐え切れそうだった。
残りは二組。
だが、もう一人は顔が青い。

頑張れ

頑張れ!

ガンバレ!!

声援を心の中で送ります。
もう歌っているグループの演奏など聴く余裕はありませんでした。

結局、最後までは耐え切り終わった後にトイレへと駆け込むメンバーを見て思わず敬礼した俺でした。












第三章:全国大会



あ!





というまに全国大会の日が三日前です。
現地入りするとまず暑さに一同やられました。
道産子の弱さがもろに出ます。
空港でこの暑さならば一体街中はどんな暑さなのか………。

全国大会のプレッシャーよりも暑さへの耐久性への不安が募ります。
相変わらず冴えないADのI氏が先導して空港出口へ。
乗ったバスはマイクロバス。
そこで僕は久しぶりに怖い思いをしたのです。









車線ぎりぎりだ!?(冷汗)









東京の道路はどうしてこんなに狭いのか?
そしてどうしてこんなスピードで曲がるのか?









気分はジェットコースター









毎日がレースなのでしょうか?
冷や汗をかきながら着いた宿泊所はビジネスホテル。
まあ、テレビの出場者とはいえこんなものです。高望みしてはいけません。
その後は特に予定もなく待機。
夜には出場者全員で食事をする事になったのです。
そこで俺は―――兄弟に出会いました(笑)

その人は北海道予選に出場し、人気によって特別に来た応援団の団長。
うちらのリーダーがこんな事を言い出しました。






「紅月とエスポワール(団長の出場名)さんって似てません?」




紅「ははは、まさかぁ………」
リ「ちょいと前髪をこう、かきあげて押さえてみてよ」
紅「こうか?」



















一同「激似!?」














まじで似てました。
その時に取られた写真を後で見ると凄まじく似てます。
世の中には自分に似ている人間が三人いるといいますが、まさかこんな所でその一人に出会うとは………。



テレビの力を改めて思い知りました。




本番前日は手順にリハーサル。
その時に俺は大事な者を失いました。


個人練習場所を仲間と共に探しながら赤坂の心臓破りの坂をのぼっていたのです。
ガードレールで仕切られた歩道は俺の幅くらいしかありません

そこでトークで笑いながら歩いていた時、体が勢いよく揺れました。
そして、ガードレールにぶつかってしまったのです。











太ももの少し上のあたりが










嫌な予感がしました。

やけにいい手応えがあったような。

そう、まるで硬い物を打ち付けて破壊したような感覚が。








俺はその予感を否定しつつ、ポケットから携帯電話を取り出しました。



















液晶が破壊されていました(泣)












しかも普通に電話はかかるのです。
メールも出来るのです。














液晶だけが、壊れました。














機能全部が壊れたのなら諦めもつきますが、これは諦めきれません。
でも今は東京。
全く関係の無い土地です。
しょうがないので親に壊れた事を壊れた携帯電話で知らせ、新たな携帯を買う準備をしておいてと頼む。





無論、明日本番がんばるから、と言って強引に携帯壊した事をごまかしたのは言うまでも無い。





そして本番当日。


下っ端「あの………」

やけに腰を低くして下っ端―――もとい、僕らの担当ADが来ました。

「あの、他の衣装を用意すると言ったら着ますか?」
「は?」


わけが分かりません。
僕らはこうして全国大会ということでスーツに近い格好をしていると言うのに………。
そして僕はADの視線が申し訳なさそうに動くのを見ました。
視線の先を見ると………



「ああ、なるほどね」



ADの言いたい事は分かりました。




僕らの格好に被っている人がいるのですよ。



しかも、どうやら僕らの方がパクリになったらしいです。



「つまり、被っているので僕らに格好を変えろ、と」
「いや、納得できないなら良いですよ………やっぱり気持ちよく歌って欲しいし」


この時点でかなり気持ちよくない(怒)


しかも提示された格好がまた気に入らない。
何しろオーバーオール麦藁帽子


北海道はそこまで田舎ではありません(怒)


流石に僕の纏っている殺意の波動を察知してADも表情を強張らせている。
でも、結局―――リーダーの説得により僕はオッケイした。





本番ではオーバーオール麦藁帽子で臨む僕ら。

しかも紹介VTRの声はスーツっぽいので決めてきていた僕らをそのまま持ち上げて「決めてきた!」なんていいやがるっす。


名倉「紅月、決めてきたんか」
紅「はい! 決めてきましたよ〜」



どこがだよ!!(大怒)





結局、自分らでは納得できない結果だったし、結果は知られているとおりで納得できないし(笑)
まあでも全国ってだけで大分勉強になりましたよ。
今も経験はアカペラに生かしているしね。


このハモネプ全国大会で得たもの。
@:いろんなアマチュアアカペラグループの演奏を生で聞けた。
A:井の中の蛙ということを実感し、更にアカペラを好きになれた。
B:携帯が新しくなった(笑)
C:テレビに出れた、ネプチューンと話せた
D:テレビの裏側を知ることが出来た。

といったとこかな



最後に感想。
















モー娘。は四人目いらなかったんちゃう?

(全国大会の日にモー娘。オーディションがテレビでやってたのでした)