「羊のうた」

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彗星の如く僕の心の中に入ってきたこの漫画。
かなり好きになりました。

主人公・高城 一砂(かずな)は高校一年生。
三歳の時に父親の友人である江田夫妻の下に預けられた。
そんな事は気にせず一砂は穏やかに日々を送っている。
しかし一月前から続く倦怠感に首をかしげていた。
美術部室で、ほのかな恋心を抱いている八重樫 葉と話している最中に貧血で倒れた一砂は幼い頃の夢を見る。
その夢に触発されて自分の生家を訪れた一砂は姉・千砂(ちづな)に出会う。
そして千砂から聞かされた事実は一砂の想像を超える物だったのだ。


高城の家系は代々奇病を患っていた。
まるで吸血鬼のように他人の血が欲しくなり、その衝動に耐えていくとやがて発狂し、死に至ると言うのだ。
そして千砂はその苦しみに幼い頃から耐えているという。
千砂は一砂が覚醒しかかっている事を知らず、何も知らずに生きていた一砂に嫉妬し全てを言ってしまうが、
一砂はその話を聞いてから一気に衝動が顕在化してしまう。
違う日に自分も衝動に駆られ始めている事を千砂に話した一砂は千砂が服用している薬をもらう。
しかしその服用にはあまり乗り気ではなかった。
自分が吸血鬼だと認めてしまう事になるから。
しかし一砂は自分の衝動を押さえきれなくなり、八重樫から離れる事を決意する。
真実を言うわけにもいかず、嘘をついてしまい八重樫を傷つけてしまう。


ある日、今までとは違う強い衝動に駆られた一砂は遂に薬を飲む覚悟をしそうになる。
だがすんでの所で回避。
必死で衝動に耐えていた所へと通りかかる千砂。
そして千砂は自分の腕を切り、自らの血を一砂へと差し出す。
そして一砂は千砂の血を受け入れるのでした。


この作品は常に切なさに満ちています。
誰もが心のどこかで人の愛を求めている。
一砂は愛する人を傷つけたくない一心で自分から遠ざかるが、その事で逆に相手を傷つけてしまう。
千砂は自分を母の偶像として愛していた父の面影を一砂に見て、同じ過ちを繰り返そうとする。
八重樫葉は他人ではただ一人真実を知り、必死で一砂を追いかける。
千砂を治療している水無瀬は千砂に受け入れられない事を分かっていても尽くし続ける。
江田夫妻は一砂との家族ごっこを寂しく思いつつも、最後の一歩を踏み出せずにいる。
それぞれの人物がそれぞれの人々を愛しているがゆえに相手に入っていけない。
そのもどかしさ、そして寂しさが読んでいて痛いほど伝わってきます。
これは本当に久しぶりにヒットでした。
これから先、一砂と千砂は世間から離れる決意をしますがその先に未来はあるのか?
結末がこんなにも待ち遠しい作品。
早く見たいです。



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